CLIFF HOUSE(2020)
■所在地:神奈川県横須賀市
■主要用途:専用住宅
■規模:地上2階
■構造:壁式RC造
■用途地域:市街化調整区域
■許容建蔽率・容積率:40%・80%
■敷地面積:274.85m²
■建築面積:109.71m²
■延床面積:187.02m²
□構造設計:Natural Sense:池田昌弘
□施工会社:イケダ工務店
□photo:新建築社写真部
□掲載誌:新建築住宅特集2020年10月号

「崖地へのアプローチ」
相模湾を一望できる高台の中腹にある、崖地に建つ週末住宅である。富士山や伊豆半島、大島までをも見渡せる眺望が魅力の土地だが、平地が極僅かしかなく、奥行きも取れない。前面道路とともに急傾斜の崖地で、ここに家が建つとは思えない状況だった。
このような崖地に対して、よりシンプルな考えで敷地との関わりを改めて考察し、平地部分の岩盤を削り設けた基礎を頼りに建物全体をキャンティレバーで海側へ持ち出すかたちとした。
敷地形状に沿う様に配置した蛇行する空間は、ゲストルームや水回りなどを1階に主体となるリビング・主寝室はより良い眺望が得られる2階に配置した。
海側に対して最大限に開き、どの空間に居ても海を臨むことができ、後方の山側との境界を、鉄筋コンクリートの壁で隔てたことにより、海へと向かう意識がさらに明確なものとなった。
過程では崖下に擁壁を設け、盛り土をしたり、崖下から壁柱を建て、スラブを延ばすことで単純に平地を増やす方法も検討したが、それらはこの環境をネガティブに捉え、故意的な考えであった。周辺環境のありのままを拠り所とし、よりナチュラルに、ポジティブに捉えることにより、この土地のポテンシャルを見いだせる建築を目指した。
(石原祥行+池田健二)

「重心をできるだけ低く、そして、山側に持ってくること」
敷地のほとんどが崖のため、平らな基壇をつくるため、崖の下から、支保工を建て、平らな基礎を空中に作り、その上に、上部構造を作る工法とする。下部は、岩盤に耐えられる限りの重さのコンクリートスラブで、山側にカウンターバランスさせる。上部は、できるだけ、軽くて薄くするため、壁とスラブだけの面構造とする。気を付けることは、テクノロジーを過信することなく、お話レベルで、理解、安心のできる、定性的な構造の構築なのだから。(池田昌弘)

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